俺はS。華の16歳。やっとバイクに乗れる年齢になった。


俺は小さなころからバイクが好きだ。


きっかけはありきたりだが、仮面ライダーだ。

 

とにかくバイクのことはよくわからなかったがかっこよくみえた。


大人になったら「バイクに乗ろう」そう思っていた。

 

時が経つにつれ、中学生になったころ雑誌で見たバイク。


そう、SUZUKIのGS400に一目ぼれしたんだ。

少し丸みを帯びたタンク。


タンクからテールに流れる美しいライン。


独特の排気音。


そして、空冷エンジンの造形美。

 

この美しいバイクに絶対乗るんだと俺は誓った。


そして、16歳になり、二輪免許を取得した。


だが、ここで問題が発生した。

 

今は2018年。GS400は1976年に初期型が発売され、すでに40年が経過している。


いわゆる「旧車」といわれるバイクだ。値段も軽く100万は超えるだろう。


俺は定時制の高校に通い、昼間は仕事をして貯金をしたため資金は問題ない。


だが、これだけ古いバイクをきちんと整備できるショップがあるだろうか。

 

まずは、下調べのためインターネットで調べる。


「旧車 レストア」 「旧車 専門店」などなど、いろいろなワードで調べた。


大体族車がでてくる。今は「旧車會仕様」とでもいうのだろうか。



この旧車會のおかげでリプロパーツなどが生産されるようになったが、
いかんせん品質に問題があるのも多いようだ。

 

そして、調べていくうちにある動画サイトの動画が目に留まった。


それは「レストア済み」のバイクをだまされて買ってしまった、おじさんの動画だった。


購入したバイクがどうも調子が悪く、他の専門店に持っていったらくそ整備のクソバイクだった
という落ちだ。ほんとうに中古車の世界は怖いと心の底から感じた。

 

その動画を見て、俺は絶対だまされたくないと思い、この動画の主が修理に出した
ショップを調べたところ、近所であることがわかった。

 

早速そのショップに行くと、まるで俺を待っていたかのように
アメリカから帰国した「GS400」が佇んでいた。

俺は高鳴る鼓動を抑え、店主と会話した。


動画で見たとおり、優しく、クソガキの俺にもわかりやすく説明してくれる。

 

俺は即決でこの「GS400」を契約した。


価格も良心的で整備の内容を詳しく教えてくれた。


納車までは時間がかかるとのことだが、40年前の車両だ。当たり前のことだ。

 

そして、3か月の時を経て俺の元へGS400が来た。


納車の日は少し肌寒い時期だった。


俺は初めての自分のバイクに興奮を抑えられなかった。

 

ショップへ到着すると店主が笑顔で迎えてくれた。


そしてそこには、ピカピカの「GS400」があった。


憧れたバイクが目の前に、俺のバイクとしてそこに在る。

あまりの興奮に体がふわふわして、現実味がなかった。


でも、確かに俺のGS400がそこに在る。夢でも幻でもない。現実だ。

 

俺は高鳴る鼓動を抑え、店主の説明を聞いた。


そして、ついにエンジンの始動。

 

チョークを下げて、スタータースイッチを押す。

 

「キュルルルっ、ボッヴォォオオン」

 

乾いた空気の中、GS400特有の乾いた音が響き渡る。


俺は興奮を抑えきれず。叫んでしまった。


その様子を店主も嬉しそうにみている。

 

店主「その辺走ってみますか?」

 

俺「はい!!!!!」

 

そして俺はついにGS400に跨った。


「ドゥルッ ドゥルッ ドゥルッ ドゥルッ…」


GSの鼓動が俺の股間を通して、全身に伝わってくる。

 

スロットルを捻ると勢いよく、吹け上がり、さらに心地いい音が響き渡る。


「ドゥルン ドゥルン ドゥルン」


レスポンスよく吹け上がるエンジン。いい整備がされた証だ。

 

俺はクラッチを握り、ギアを一速に入れた。


「ガコっ」


少しの衝撃があり、ギアはスムーズに入った。

 

「ドゥルン ドゥルン」


スロットルを軽く煽り、ゆっくりクラッチをつないでいく。

 

「ドゥルルルルルル」


GSはゆっくり進み始めた。


教習車とはまるで別物だ。ゆっくり、そして力強く加速していく!

 

俺はたまらず、ニヤけてしまった。この心地いい風。


たまらない快感だった。思ったよりもスムーズに高回転まで回るエンジン。

 

どこからでも、加速していく力強い走り。そして、マイルドであるがしっかりと
制動するブレーキ。目線を向けた先に加速し、曲がっていく。

 

どこを取っても、非の打ちどころがない、素晴らしいバイクだ。


「やっぱりこのGSは俺を待ってたんだ」


俺はこの時あらためてそう感じた。